友人もうすうす聴いていたのか
友人もうすうす聴いていたのか、そこで夏中の事件を問い糺すので、僕はある程度まで実際のところを述べた。それから、吉原へ行こうという友人の発議に、僕もむしゃくしゃ腹を癒すにはよかろうと思って、賛成し、二人はその道を北に向って車で駆けらした。
翌朝になって、僕も金がなければ、友人もわずかしか持っていない。止むを得ず、僕がいのこって、友人が当てのあるところへ行って取って来た。
「滑稽だ、ねえ?」
「実に滑稽だ」
二人は目を見合わせて吹き出した。大門を出てから、ある安料埋店で朝酒を飲み、それから向島の百花園へ行こうということに定まったが、僕は千束町へ寄って見たくなったので、まず、その方へまわることにした。
僕は友人を連れて復讐に出かけるような意気込みになった。もっとも、酒の勢いが助けたのだ。
朝の八時近くであったから、まだ菊子のお袋もいた。
「先生、済まない御無沙汰をしていまして――一度あがるつもりですが」と、挨拶をするお袋の言葉などには、僕はもう頓着しなかった。