あなたの仰しやる通り

『あなたの仰しやる通り、食べられるきのこと毒のあるきのことを一と目で見分ける事は出来ません。けれどもそれが分る方法があります。』とシモンが云ひました。
『何うするんですか。』
『秋きのこを小さく切つて日に乾します。それを冬になつて食べるとおいしいものです。毒のあるきのこは乾かないで腐つて了ひます。そこでいゝのだけを蔵つておくのです。』
『それはいけません。良いきのこも悪いきのこも、その成長の如何により、又それを乾す時の天気によつて、或は腐つたり或は腐らなかつたりするのです。そんな見分け方は役に立ちません。』
『しかし、いゝきのこには虫がたかりますが、悪いきのこには虫がたかりません。それは毒で虫が死ぬるからです。』とこんどはアントニイが口を出しました。
『それは先のよりももつと間違つてゐます。虫は、古いきのこには、その良し悪しに構はずに集ります。吾々なら死ぬやうな毒でも虫には利かないのです。虫の腹は毒を食べても差支へのないやうに出来てゐます。或虫はとりかぶとや、ヂギタリスや、ベラドンナのやうな、吾々を殺すやうな草を食べてゐます。』