高谷君はその縄の端を
高谷君はその縄の端を立木の根へしっかりと縛りつけて、初めて堤の上に登った。
「よくお出でになりましたね。」と、男は笑いながら挨拶した。かれは三十ぐらいの、体格の逞ましい、元気のよさそうな男であった。
高谷君は自分の身分と目的とを説明すると、男は愉快らしくまた笑った。
「さようですか。まあ、こちらへいらっしゃい。この島にはそうたくさんもありませんが、それでも相当に麻畑があります。わたしがすぐに御案内します。わたしは丸山俊吉という者です。」
かれは日本の人で、三年ほど前からこっちへ来て、日本人と原住民とを合せて七十人ばかりの労働者の監督をしていると言った。高谷君は彼のあとについて堤から十町ほども行くと、広い麻畑が眼の前にひろがって、芭蕉に似た大きい葉が西南の風になびいていた。丸山はその一年の産額や品質などをいちいち詳しく説明してくれた。