午後一時、これから雜誌人間十二月號の爲め
午後一時、これから雜誌人間十二月號の爲めの小説を書き初めるのだ。英枝よ、これは日記の一節だから、手もとへ行つても、このまま保存して置いて貰ひたい。鹽原は交通が不便な爲め今のところ二度と來るつもりはないから、來た以上、暫らく滯在する。そして『人間』の小説と中央公論へ渡した物の續き四五十枚を書いてしまうあひだに、一度もッと奧の方へ遊びに行つて來るかも知れない。兎に角、轉宿等の知らせが行くまではここへ東京日々だけを毎日送つて貰ひたい。大抵の手紙も保留して置いて、誰れから何が來たと云ひさへすればよし。
*
湯は並んで大小三室にも別れてゐるが、客としては僕ひとりが自由に占領してゐられるやうなものだ。本館には誰れもゐないやうすだ。
十月廿九日。曇。今曉二時まで起きてて、今一度湯にあッたまつてからとこに就いた。けふ、晩食後、別館の老人夫婦を訪問して見たら、