帆村はその足で

 帆村はその足で、すぐさま奇人館の前に行った。

 なるほど、それは実に奇妙な建物だった。よく病院の標本室に入ると、大きな砂糖壜のような硝子器の中に、アルコール漬けになって、心臓や肺臓や、ときとすると子宮などという臓器が、すっかり色彩というものを失ってしまって、どれを見てもただ灰色の塊でしかないというのが見られる。この奇人館はどこかそのアルコール漬けの臓器に似ていた。
 灰色の部厚いコンクリートの塀、そのすぐ後に迫って、膨れ上ったような壁体でグルリと囲んだ函のような建物。――それらは幾十年の寒さ暑さに遭って、壁体の上には稲妻のような罅が斜めにながく走り、雨にさんざんにうたれては、一面に世界地図のような汚斑がべったりとつき、見るからにゾッとするような陰惨な邸宅だった。
 それでも往来に面したところには、赤く錆びてはいるが鉄柵づくりの門があり、それをとおして石段の上に、重い鉄の扉のはまった玄関が見えていた。

 

成城 歯周病 明日に向かってつぶやく