御苦労さまで

「御苦労さまで、どうも。所で赤羽さん、あの感電騒ぎをやった井神陽吉という男ですな。

大分意識も恢復して来たようですが、先生頻りに帰りたい帰りたいと言うのです。言ってきかせても解らないので閉口してますが、どうでしょうな、あんまりあの男の意志に逆らうと、心臓が昂進して悪いのですが、お差支えなかったら、あの男を一応帰らしたらと思うんですが――。ええ、もうそりゃ決して逃げられるような身体じゃありませんよ」
「じゃあ帰してやりましょう。警察の者を二三人附き添わしてやって下さい。然し一応身元調べをすましたんでしょうな?」
「身元調べでは先刻注射の後で、前の交番の村山巡査にやって貰っときましたよ。村山君、ちょっと先刻の調査を見せて呉れませんか?」
 呼ばれて釜場へやって来たのは、制服の巡査村山辰雄であった。彼は、事件の最初から見張り番に当って、一向犯行の経路も、捜査の経緯も知らないのであった。

 

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