「それで、博士、わが外交陣は、これより懸命の活躍をはじめ、戦争の勃発を、極力おさえるつもりであるが、しかし……」
といって、鬼塚元帥は、しばらく目を瞑じ、
「……しかし、それが不成功に終った暁には、われわれは、大東亜共栄圏の自衛上、武器をとって立ち上らなければならないのだ。そして、世界史始まって以来の最大の死闘が、この地球上に展開されるであろう。そのへんの覚悟は、して置いて貰いたい」
「元帥閣下、よく分りました。貴官のお考えでは、戦闘はいつから始まりますか」
「余の予想では、早ければ、あと二十四時間のちだ」
「え、二十四時間のち?」
私は、おどろいた。戦機は、そのように迫っているのであろうか。
「そして私に対する何か新しい御命令がありますか」
「そのことじゃ、黒馬博士」
と、元帥は、顔を私の方へ近づけ、
「博士は、直ちにクロクロ島へ戻ってもらいたい。そして今後、わが命令を待ち、命令が達したらば、クロクロ島を指揮して、戦線へ出てもらいたい。これを渡しておく。これがわが命令の暗号帳だ」