どうしたい、辻ヶ谷君
「どうしたい、辻ヶ谷君」
僕は、すこし気味がわるくなったので、きいてみた。
「しずかに……」辻ヶ谷君は、しかりつけるようにいった。
「……うん、あったぞ」
辻ヶ谷君の青んぶくれの顔に赤味がさしたと思ったら、彼はあらい息と共に穴から腕をひきぬいた。穴ぼこの中からがちゃがちゃという音がきこえたと思ったら、彼の手は鉄の鎖を握って引っぱりだした。
「これさ。これを引っぱると、君の目玉はぐるぐるまわしだ、びっくりするだろう。いいかね」
辻ヶ谷君は、その鎖に両手をかけて、えいやッと手もとへひいた。すると、どこだか分らないが近くで、ぎいぎいぎぎいと、重い扉がひらくような音がした。いや、ほんとうに扉がひらいたのだ。すぐ目の前の小石が瓦のかけらが一方へ走りだしたと思ったら、敷石のゆかが傾き出してその上から地下道へつづいている階段が見えだしたのだ。さあその階段を下りて地面の下へ入って行くのだ。「頭をぶっつけないようにしたまえ。君から先へ……」