成層圏も、高度二万七千メートルになると

 成層圏も、高度二万七千メートルになると、いやにすごくなる。

まるで月光の下の墓場を見る感じだ。いや、それ以上だ。
 いまはまだ昼間だというのに、空はすっかり光を失って、漆のように黒くぬりつぶされている。ただ光るものは、ダイヤモンドをまきちらしたような無数の星、それとならんで冷たく光っている銀盆のような衰えた太陽が見えるばかり。この荒涼たる成層圏風景を、うっかり永くながめていようものなら、そのうちに頭がへんになってくる。
 そういう折しも、指揮官望月大尉ののった彗星一号艇が奇怪なる消失。あれよあれよといううちに、白く光る廻転楕円体の雲の中に包まれて、見えなくなったそのふしぎさ。なぜといって、高度二万七千メートルの成層圏には水蒸気は存在しないから、雲がある道理がないのだ。しかるに帆村荘六も、山岸中尉もともにはっきりと白い雲を見たのである。けっして見まちがいではないのだ。うち重なる成層圏の怪異。この怪異をとく鍵はどこにあるのか。

 

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