まずわたくしの笑いを
そういって、まずわたくしの笑いを誘い出した。わたくしが、まあ綺麗ねと言って例の女の癖の雛妓の着物の袖を手に取ってうち見返す間に雛妓はきょう、
ここから直ぐ斜裏のK――伯爵家に園遊会があって、その家へ出入りの谷中住いの画家に頼まれて、姐さん株や同僚七八名と手伝いに行ったことを述べ、帰りにその門前で訊くと奥さまの家はすぐ近くだというので、急に来たくなり、仲間に訣れて寄ったのだと話した。
「夏の最中の園遊会なんて野暮でしょう。けど、何かの記念日なんだから仕方ないんですって。幹事さんの中には冬のモーニングを着て、汗だくでふうふう言いながらビールを飲んでた方もあったわ」
お雛妓らしい観察を縷々述べ始めた。わたくしがかの女に何か御馳走の望みはないかと訊くと、
「では、あの、ざくざく掻いた氷水を。ただ水というのよ。もし、ご近所にあったら、ほんとに済みません」
と俄に小心になってねだった。