係官の一行は

 係官の一行は、うすぐらい廊下を奥の方へと進んでいった。

 先頭には、かなりきげんのわるそうな針目博士が肩をゆすぶって歩いている。そのすぐうしろに右頬を斬られ大きなガーゼをあてて、ばんそうこうで十字にとめた田口巡査がついていく。もしも博士が逃げだすようすを見せたら、そのときはすぐうしろからとびついて、その場にねじ伏せる覚悟をしている田口巡査だった。
 それから少し歩幅をおいて、長戸検事を先に、残り係官一行が五、六名つきしたがっている。
 検事の顔色は青黒い。細く見ひらいたまぶたのうしろに、眼球がたえずぐるぐる動いている。
 それはかれが気持わるく悩んでいることを意味する。
(手がかりらしいものは、なんにもない。犯行だけが、二つ、いや三つもある。こんなことではこの事件はいつとけるかわからない。ぼやぼやするなよ、長戸検事)
 そんな声が、検事の頭の中でどなり散らしている。これまで彼が現場へのぞめば、事件解決のかぎとなる証拠物を、たちどころに二つや三つは見つけたものである。そして犯人はすぐさま図星をさされるか、そうでないとしても、犯人のおおよその輪廓はきめられたものである。
 しかるに、こんどの場合にかぎり、そうではなく、さっぱり犯人の見当がつかないのである。そればかりか、事件そのものの性質がよくのみこめないのだ。

 

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