新田先生は、博士にたずねた

 新田先生は、博士にたずねた。

「よけいなことは聞かないがいい。それよりも、モロー彗星をよく見ておくがいい。間もなく、雲にさえぎられて見えなくなってしまうから……」
 博士は言った。
 新田先生は、博士に叱られながらも、地底から見えるこの望遠鏡の不思議について考えた。空が見えるからには、この望遠鏡のあたまは空へ向けて出ていなければならない。そこのところがどうなっているのか、先生は知りたいと思ったのである。だが、博士は、それについて、返事をしなかった。
 モロー彗星は、博士の言ったように、間もなく雲にかくれて見えなくなってしまった。先生は、そのことを言って望遠鏡から目をはなすと、博士は、
「これから、一日増しに、大きく見えて来るじゃろう。そうして、やがて地球に衝突する一週間ぐらい前になると、モロー彗星の一番太いところは満月ぐらいの大きさになるじゃろう。そのころには、人間のなかで、気の弱い奴らは、そろそろ妙なことを口走るようになるじゃろう」
 博士は、気味の悪いことを言った。

 

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